1月5日 術後のワンちゃんが院内で 大脱走でした

昨日このブログで書いたように 本日は 乳腺腫瘍のワンちゃんの摘出手術を行う予定でした。所が そのワンちゃんを 朝ご自宅まで迎えに行って 病院の運動場につないで様子を見ていると 陰部から かなり大量に泥状の汚い物質が 滲み出しているのに気づきました。白いティッシュに吸い取って 臭いや状態を確認した所 子宮に貯まって 溢れ出てきている膿であることが分りました。飼い主さんは 腫瘍が鶏卵大になるまで 全く気付かないような かなりのんびりした方なので 昨日 私も陰部から うっすらと赤いものが出ていることは確認して 飼い主さんに尋ねましたところ 半年位前に生理があったので また生理が来たのだと思う と言う事でしたので 子宮に膿がたまる病気の蓄膿症は 一般的に生理が終わってしばらくしてから発症する病気ですから 想定していませんでした。
私もうっかり飼い主さんの言葉を鵜呑みにしてしまって 昨日は生理による下り物 と安易に判断してしまいました。そもそも生理が来ても 出血量が凄く少ないし 本人が陰部を舐めてしまうので 殆ど出血を確認できない と言う事なのだそうで 普段から飼い主さんが殆ど気づかぬうちに 生理が終了してしまっていることも多かったのだそうです。ですから 本日手術するために預かったワンちゃんは 大きな乳腺腫瘍と 子宮蓄膿症 と言う厄介な病気を二つも同時に抱えていることが 手術当日になって判明しました。
どちらも解決策は 腫瘍と膿が溜まった子宮を取り除く手術なのですが 蓄膿症の方が 直ぐに食欲元気を消失させて 命に関わりますから 緊急性がありますので 直ぐに飼い主さんに電話をかけて 事情を説明して 手術の内容の変更を 了解してもらいました。手術のに使う器具などには 変更がなかったので 私の気持ちだけ切り替えて 午後から手術に立ち向かいました。蓄膿症の手術は 膿がパンパンに溜まって肥大した子宮とついでに卵巣を摘出する手術です。手術自体は 麻酔も安定してかかってくれましたので スムーズに終わりました。麻酔を切ると短時間で元気を取り戻してくれたので 一安心していました。
そして夜に 今日は厄介な手術を頑張ったので 自分にご褒美をと考えて 新年会のつもりで奥様と久し振りに焼き肉を食べに出かけました。食事の終わりがけに 患者さんからの電話が携帯に転送されてきました。外出から戻ると 犬がぐったりしているので直ぐに診て欲しいとのことでした。焼肉を食べて 多少贅沢をしまいましたので 喜んで診察させてもらう事にして 慌てて病院へ戻りました。急患の来院を待っていると 更に別の電話が入って 犬がタオルを飲み込んでしまったので 直ぐに診て欲しいという事でしたので 来院してもらう事にしました。
何とか二件とも 無事に診察を終えられて 時間外に続けて急患が入ってくれましたので 昼間手術以外は暇だったぶんがとりもどせたみたいでほっとしました。既に十二時近かったので 二階に上がって休もうと思いましたが ふと気になって 入院室の手術した子の様子を窺いました。すると閉まっているはずの部屋の扉が 空きっ放しになっています。慌てて様子を見に行くと 昼間手術をした子の姿が見当たりません。入院している部屋には 勿論普通はかなりの力で押しても 開かない構造になっていますが 病院が出来て二十年以上たちますので カギの部分が多少甘くなっていたのかもしれませんが 力づくで扉をこじ開けてしまったようです。
入院室の出入り口のドアノブは 丸いタイプではなくて レバーの形をしていますので 大きめの犬が前足を偶然にかけて押した場合 開いてしまう可能性があります。普通だと この二つの扉を犬が自分で開いてしまう事等 この二十年以上の間で起こったことは一度もありませんでしたが 現実にワンちゃん それも十数キロのかなり大きめの子が 脱走してしまったのです。入院室からも運動場への出入り口はありますが その扉は施錠されていましたので 勿論病院の外部に脱走してしまったとは 考えられません。
私は 現実には考えにくい状況になってしまって 正直かなりパニクッってしまいましたが 何とか落ち着いて 病院内から確認を始めました。手術室やICU等を覗きましたが 見つかりません。そういえば 預かったその子を運動場につないて おしっこをさせてから 入院室に誘導した時に 勝手口から二階へ続く階段を 普段から登りなれているのか 直ぐに二三段駆け上がってしまった と奥様が話していたのを思い出しましたので 二階に上がって 犬を探しました。二階は 三十畳ほどのLDKと風呂場とトイレしかありませんので その一つ一つを確認しましたが 見つかりません。仕方がないので 三階には 殆ど現在使っていませんが 三部屋ありますので確認しました。
すると一部屋の布団がきちんとたたんでおいてあるはずの所が 布団が広がっていました。ひょっとしたらと思って 布団をめくってみると その子がスヤスヤと眠っていました。せっかくぐっすりと眠っている所 悪いのだけれども 揺り起こしました。術後なので エリカラーをしているのですが よほど階段の上り下りに慣れているみたいで 上手に階段を一段ずつ降りてくれました。何とか入院室の部屋に戻して 今度はその扉が絶対に開かないように 普段は面倒なので かけない鍵をしっかりとかけました。
まあある意味 手術後脱走するぐらいに元気になってくれていましたから 喜ぶべきことなのかもしれませんが 心臓に悪いので 二度と今後このようなことが起こらないように 十分な対策を立てることにしました。兎に角 本日は昼間結構大変な手術をして 夜に急患を二件も見て その後で 脱走劇に遭遇しましたので かなりしんどい一日でした。ベッドに潜り込んだら 一瞬で眠れそうです。お休みなさい。

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