1月6日 気管の太い猫の手術

 猫の避妊の手術をしました。これまでに何百頭の猫に全身麻酔をかけてきたか分かりませんが 猫に使用する気管チューブという全身麻酔をかけるための道具ですが全て3番を使用していました。(3番というのはチューブの内径が3mmという意味です) 気管チューブというのは手術をするのにガス麻酔をかけるために用いる口から 喉の奥の気管の入り口に挿管して安定した麻酔をかけるための道具です。犬は体のサイズが大小さまざまですから 気管チューブのサイズも4番から9番ぐらいまで身体の大きさ、というよりも気管の太さにより使い分けます。所が猫の場合これまでずっと3番しか使いませんでした。どんなに大きなネコでも(体重がたとえ10kg位あっても)3番でジャストフィットしていました。

 所が本日手術した猫は 妊娠していることが明らかで かなりお腹が膨らんでいたし、体重も5.8キログラムで重たかったですが それほど大柄でもなくて 当然3番の気管チューブがフィットするはずでした。当院で全身麻酔をかけるとき犬の場合は静脈から導入麻酔を投与します。猫の場合は筋肉注射で導入麻酔を投与します。この猫ちゃんも当然筋注で導入麻酔を投与して ある程度効果が現れたら マスクを被せて ガス麻酔薬を吸入させて 完全に意識の無くなった状態にします。 

 そして犬歯(一番大きな牙に当たる歯です)に開口器をかけて口を大きく開き気管チューブを挿入します。その時に猫にしては期間の入り口が大きいなとは思いましたが これまで猫には3番しか使用したことが無かったので そのチューブを挿管して固定して麻酔を安定させようとしました。これまでは気管チューブを挿管すればいずれ麻酔状態が安定するので 手足をひもでくくって体を固定して 術野(手術をするスペースです)の毛を刈って皮膚をきれいに消毒する作業に入るはずでした。

 ところがこの猫はいくら待っても麻酔状態が安定しません。かなり麻酔濃度を上げてみましたがしっかりかかりません。チューブから息が漏れていて安定した麻酔状態にならないと判断して、一度挿管したチューブを抜いて再びマスクを被せました。しょうがないので4番の気管チューブを用意して、ふたたびおなじ手順を繰り返したら やっと安定した麻酔状態になりましたので、手術を始めることが出来ました。

 この猫のお腹のふくらみ具合から見てかなりの頭数の胎児が入っていそうでしたが なんと6匹も入っていました。生れる寸前だったみたいで  胎児が動いているのが確認できましたが 生まれる直前に手術できてよかったのだと思います。勿論摘出した胎児は直ぐに息を引き取るはずですが 生まれてしまっても面倒をみてくれる人の当てのない子猫ですから 可哀そうには思いますが 生まれる前に処置できてよかったのだと思うようにしています。

 胎児が6匹も入っていた事にも驚きましたが それ以上に猫でも4番の気管チューブでなければならない子がいることの方が凄くびっくりしました。今までは猫に麻酔をかけるときには気管チューブは3番しか用意していませんでしたが これからは4番も用意するようにしようと思いました。ちなみに私が全身麻酔をかけられるときに使用された気管チューブは8番だそうです。大型犬の場合勿論私よりも首回りも大きいから 私よりも大きなチューブがフィットする子もいるのでしょう。

 術後の経過は落ち着いており明日には問題なく退院できそうなので安心しました。今日はかなり疲れたので早めに休もうと思います。お休みなさい。

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