10月17日 史上最悪の暴れん坊野良猫の避妊手術をしました

うちの病院では 野良猫の避妊と去勢の手術はトータル金額を半額にしていますので ちょくちょく野良猫の避妊手術の予約が入ります。これまでに百件以上は野良猫の手術を行っていると思います。当たり前ですが 野良猫は人に接することに慣れていません。勿論本人が避妊手術に同意したわけでもありません。まあ飼い猫の場合も 飼い主さんの同意しか いただいてはいませんが。昨日までは 勿論毎日コンスタントに食べられる保証はありませんが 自由気ままに暮らしていたはずです。
今回この猫を捕獲して 連れてこられた方は この猫がちょくちょく子猫を連れて歩いているのを見かけていたので 何とか捕まえて避妊の手術をしないと 近所の野良猫が増えるばかりだと考えて わざわざ猫を捕獲する道具を借りてきて いわゆる食べ物をおとりにして 猫を捕獲されました。人間にもいろんな性格の方がいらっしゃるように 猫の性格 捕獲された時の 即ち自由を奪われた時の反応も千差万別です。取り敢えずは諦めたふりをして 大人しく振る舞っておいて反撃もしくは脱走のチャンスを狙う賢いネコもいれば ひたすら暴れたくって体力の続く限りは逃げ出そうとする猫もいます。
本日やってきた猫は ひたすら暴れまくるタイプの猫でした。あまりに暴れまくるので 丈夫な金網でできた捕獲器の中で 殆どの爪が折れてしまい 肉球もすりむいていたようで 足先が血だらけになって病院に運び込まれてきました。少し前にアライグマの捕獲器なるものがあるのだそうですが その捕獲器に誤って猫が捕獲されてしまったので ついでに避妊の手術をしてほしいと連れてこられた猫の面倒をみたことがありました。
避妊の手術をする場合 最初の手順は 導入麻酔薬を筋肉注射で投与します。大人しいネコの場合はバスタオルにくるんで おしりの筋肉に注射します。この注射はかなりの痛みを伴うらしくて 大暴れをする子もいれば 恐怖のために固まってしまって ほとんど無反応の子もいます。取り敢えずは手術の第一歩として しっかりと捕まえるのが重要ですが アライグマの捕獲器は結構大きくて こちらは皮手袋をはめて バスタオルを二枚重ねにしたもので 何とか猫を捕まえようとしました。普通はこのような状況になると 猫は逃げ惑う体勢になる場合が多いので 当然そのように対応してくることを予想していましたが その猫はこちらに向かって襲い掛かってきました。
その為に捕獲器からするりと逃げだして 診察室の中をとびまわりました。何とか尻尾と後ろ足をつかんで 体を確保しました。バスタオルにくるみ込んで大暴れをしていましたが 私が猫を押さえつけるのが精いっぱいだったので 奥様に筋肉注射をしてもらいました。数分経つと薬が効いてきて大人しくなったので その後通常の手順で手術を行いました。そんな暴れん坊の猫を 抜糸までの十日間病院で預かって面倒をみました。通常は飼い主さんに抗生剤などを三日間内服させてもらいます。同時に一日に一二回傷口を消毒して抗生剤の軟膏を塗布してもらいます。所がこの子は勿論傷口の消毒など出来る訳がありませんから 退院まで抗生剤を内服させました。普通これだけ反抗心の強いネコの場合 なかなかご飯を食べてくれないことが多いのですが この子はかなり食い意地が張っているみたいで最初からがつがつ与えたフードを食べてくれましたので 投薬し易かったです。十日後にまた麻酔をかけて抜糸をしましたが 傷口はきれいに直ってくれていました。連れてこられた方にお返しした時には 普通の状態に戻っていましたから かごから出してやると一目散に走りだして一瞬で見えなくなったのだそうです。この子も相当に暴れん坊で 苦労しましたが 本日預かった子の方が更に大変そうです。
なんとか捕獲器の中で一番奥に何枚ものバスタオルを使って押し込んで 外側から導入麻酔薬を筋肉注射しました。薬が効いてくると当然大人しくなりますから 捕獲器から引っ張り出して 取り敢えずは血だらけの足先の処置をしました。簡単に消毒して抗生剤の軟膏をたっぷりと塗擦しました。この傷の消毒して抗生剤を塗る処置も本来なら毎日してあげたいのですが まあ無理でしょう。ぼやぼやしていると麻酔が覚めてくるので 手術室に運んで きちんと麻酔をかけて 手術を始めました。麻酔をかけるのには凄く手こずらせてくれましたが 一旦麻酔がかかってからは 非常に安定していてくれましたので 避妊の手術は簡単に終えることが出来ました。術後麻酔がかかっているうちに 傷口をしっかりと処置してから がっちりと絶対にはずれないように気を付けてエリカラーを装着しました。手術の傷口と足先を舐めさせないためです。
これから十日間 取り敢えずは餌を与えますが 警戒心が強すぎる子の場合は 鰹節などをかけて 美味しそうにしますが なかなか食べてくれない子がいるので心配です。餌を食べてくれないと 化膿止めの抗生剤をコンスタントに投与できなくなるかもしれませんから 不安ですが まあすんなり食べてくれることを期待するしかありません。ちゃんとトイレに排泄してくれれば 面倒をみやすいのですが うちの猫用トイレがご本人のお気に召さないと おしっこうんこを撒き散らされることになり 更に手間が増えますが どうなるかは明日にはわかるでしょう。扱いにくい子の場合はかなり苦労しますが 手術を請け負った以上は 何とか無事に抜糸までにこぎつけて 元気に退院してくれるように頑張るしかありません。兎に角本人が同意してもいない手術ですから 後遺症が残らぬように責任を持って一生懸命に対応しようと思います。正直な気持ち かかる労力に比べて 収入的にはかなり少ないですが うちのような病院が少しでも世の中のお役にたてる唯一の機会かもしれませんから 頑張ります。

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