10月3日 肛門嚢破裂の子が二人続けて来院されました

 肛門嚢と言うのは犬や猫の肛門の両脇の皮下数mmの位置にあり、直腸に排出口を持つ分泌腺です。直腸のすぐわきにありますから 排便時に直腸が拡張することにより圧迫されて貯蔵されている分泌液が直腸に押し出されて大便に付着します。つまり大便にその動物固有の匂いを付ける為の分泌腺です。犬が散歩の時などに落ちている糞の匂い嗅ぎに行きますが、あれは大便の臭い匂いを嗅ぎに行っているわけではなくて どこのどんな犬の大便であるのかを調査に行っているのです。
 犬同士のご挨拶でも まずは顔を見合わせますがその後下半身の匂いを互いにチェックしに行きます。それは別にエッチなつもりではなくて 落ちている糞と同様に この動物の独特の匂いを確認しているのです。肛門嚢は個体識別のための大切な役割を持つ分泌腺なのです。分泌液は定期的にどんどん分泌されますので 排便の度にコンスタントに排出されれば問題はありませんが 分泌液の出口は直腸に開口しているので ちょくちょくその出口に大便のかけらが詰まり排出がスムーズにいかなくなります。
 分泌液は一定のペースでどんどん分泌されますが その排出がスムーズにいかなくなると徐々に分泌物の貯蔵庫である肛門嚢がふくらんできます。それで肛門のあたりがむずむずするのか、肛門を排便後に地面にこすり付ける仕草をするようになります。因果関係ははっきりしませんが 足の裏、肉球のあたりを舐めたり咬んだりする場合も多いみたいです。
 一定量以上に貯まりすぎると 肛門嚢が破裂してしまい 肛門のすぐわきの皮膚が破れて穴が開いてしまいます。皮膚の敗れた場所が場所だけに 不潔になり易く化膿したりする心配がありますから すぐに傷口を消毒液で洗浄しました。もし傷口を舐めるようなら エリカラーをして舐められないようにする事が必要かもしれません。自宅では飼い主さんに傷口の消毒と抗生剤の塗布、内服薬でやはり抗生剤、消炎剤を投与してもらいます。
 取り立てて珍しい病気ではありませんが、傷の消毒とかはかなり痛みを伴うのか 結構抵抗されて大変なのに そんな患者さんが二匹続いたので 日記に取り上げてみました。体質的に貯まりやすい子と殆ど貯まらない子がいるみたいです。貯まった時のしぐさ、排便後に肛門を地面にこすり付けることや 足の裏を舐めたり咬んだりしたら すぐに肛門脳を絞ってあげることが必要です。病院で絞り方は指導しますが できない場合は来院されることをおすすめします。割と兆候が分かりやすい病気なので 気づいたら早めに対処してあげてください。

ブログ一覧