10月7日 夜診察後に子宮蓄膿症の手術をしました

子宮蓄膿症とは 雌の陰部から細菌が膣内更には子宮内に侵入することから始まります。子宮内と言うのは 胎児を成長させるための場所ですから 適度に暖かくて 十分に潤っていますので ある意味細菌が増殖するのには最適の環境なのです。一旦細菌の侵入を許すと 急激に増殖してしまいます。細菌の増殖により 先ず食欲が減退します。更に症状が進むと嘔吐が始まります。当然元気が消失してきます。腎臓もダメージを受けて 水分の吸収が減少してきますから 多飲多尿の症状も現れます。
本日来院した犬は 今朝から元気消失していましたが 嘔吐や多飲多尿等の典型的な症状は出ていませんでした。只血液検査で 白血球が正常値の四倍以上にも達していました。それに陰部から膿が溢れていましたから 診断は簡単につきました。この病気は 内科的に点滴に抗生物質を大量に混入して投与して増殖した細菌の減少を期待する内科的な治療法もありますが 殆ど効果は期待できません。回り道をして体力が低下してしまい 手術のリスクが高くなるばかりです。
結局は 飼い主さんへの私の説明如何によるのかもしれませんが 手術をするのがベストの治療法であることを選択してもらうことが重要です。飼い主さんとしては まさか手術しか適切な治療法がない病気であることを予想して来院されていませんから 突然手術しか有効な治療法がない それもそこそこリスクを伴う手術と説明されると 躊躇してしまうのは当然かもしれません。しかし内科的な治療を試みて 様子を見ることにより 体力を消失してしまって より手術のリスクが高まりますから 私としては出来たら手術をすることを決意して頂きたいのです。
幸いにも本日の飼い主さんは 勿論かなり躊躇されましたが 今夜のうちに手術することを 決断してくださいました。それにしても 私はこの手術を百件以上経験していますが その殆どが夜病院を閉めてから行っています。午前中に来院されて そのまま昼間に手術をする可能性もあるはずですが 何故かこの病気の患者さんは夕方に来院されるケースが殆どなので 昼間にこの手術をした記憶はありません。
本日は昼間にも手術をして 結構疲れていましたが 先延ばしは出来ないので 慌てて器具を滅菌して その他の手術の準備を整えました。この手術は 膿がパンパンに溜まった子宮とついでに卵巣を摘出しますから、やることは普段からよくやっている避妊の手術と同じですので 技術的にはそれほど難しくはありませんが まるで妊娠中の様に大きく膨張していますから 大きくなっている子宮を摘出しますので 当然切開部分も大きくなるし 血流量が増えているので 出血量も多くなります。勿論食欲元気が消失していますから 普段の避妊の手術よりもずっと慎重さが求められます。まあその分普通のの避妊の手術よりも高い料金を頂きます。
今日手術した犬は 30キロ以上もあるゴールデンでそこそこの高齢犬でしたから 体が大きくて 手術としては かなり難航しました。喉の構造が独特だったためか 気管チューブがなかなか気管に挿管できなくて 出だしでまずつまずきました。開腹してからも 普段なら出血しないはずの部位から 何故か大量に出血したのです。いちいち立ち止まって止血しながらの作業でしたから 通常の子宮蓄膿症の手術よりも一時間ほど余計にかかってしまいました。とはいえ 無事に何とか手術を終えましたので 飼い主さんにその事を電話で伝えますと ホッとされていました。
かなり出血の多い 不細工な そしてとっても疲れた手術でしたが 明日の朝 どれくらい元気と食欲を取り戻してくれているのか楽しみであり 正直な気持ちは不安でもあります。取り敢えずは自分としての最善を尽くしたつもりですので少しでも早く回復してくれることを祈ります。

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