11月15日 久しぶりに風邪の猫に吸入治療を施しました

 吸入治療とは 薬を霧状にしてほぼ密閉された部屋に流し込み その中に猫を入れて自然に呼吸することで鼻や喉の粘膜にに直接風邪を治す薬を投与する治療法です。人間も同様ですが 毎年寒さが本格的になると猫風邪のシーズンが到来するので この季節にはよく施す治療方法です。猫風邪の分かりやすい症状としては 目ヤニやくしゃみ、鼻水、咳などがあります。家で飼い主さんが出来る有効な治療法が頻繁に目薬を点眼することです。
 点眼した薬はまず目の炎症や感染を治療し、次に鼻に流れ落ちて鼻の粘膜に作用し くしゃみや鼻水多い状態を改善します。やがては鼻水とともに喉に流れ落ちて咳を誘発している喉の粘膜の治療にも働いてくれます。目薬を点眼することは目だけではなくて鼻や喉の治療にまではたらいてくれるのです。
 但し頻繁にと言うのは できたら一日に二三十回点眼することを意味します。人間の場合は目薬を点眼する回数は多くても四五回かもしれません。その理由は人間の場合一度目薬をさすとその薬が少なくとも一二時間その場にとどまって働くからです。ですからほんの四五回させばお薬が八~十時間も効いてくれます。ところが、犬や猫の場合は涙の分泌量が人間の十倍以上です。勿論その涙が瞼から溢れることは殆どありません。涙鼻菅という目から鼻に抜ける管を通って大部分が鼻に流れ落ちてしまうからです。従って犬や猫の場合一度目薬を点眼しても その場にとどまっている時間はほんの五分間ぐらいのものなのです。ですから、たとえすごく頑張って一日に三十回点眼してもその薬が目で効果を発揮するのは やっと百五十分即ち二時間半しかないのです。
 勿論一人で三十回点眼するのは凄く大変ですが ご家族が例えば四人いらっしゃれば一人当たり七八回点眼すれば合計で三十回になりますからご家族みなさんが協力すれば それほど苦労しなくても達成できるい回数だと思います。但し、目薬を差すのは人間が自分でやっても 結構嫌なもので ましてやデリケートな猫ちゃんにそれだけ頻繁に点眼するのはかなり大変な作業であることは間違いがないと思います。場合によっては 頑強に抵抗されて一度もきちんと目薬を点眼できないような猫ちゃんもいるかもしれません。 
 そんな場合に有効なのが このお薬を霧状にして自然に呼吸してくれれば 鼻や喉の粘膜に直接お薬が届く吸入治療なのです。吸入治療器は夏場はほとんど出番がありませんが 冬本番が始まるこれからは大いに活躍してくれると思います。たかが風邪ですが 猫が一番命を落としている恐ろしい病気なのです。だからこそ猫風邪を未然に防ぐワクチンが開発されました。
 人間も同様ですが かかってしまってから クシャミは鼻水、咳、発熱等の辛い思いをして、治療に高い費用がかかってしまう風邪は注射一本でほぼ確実に予防できますから、ぜひワクチンの接種をお奨めします。特に当院の場合ワクチン費用はかなり安く設定していますから 実際に風邪にかかってしまって治療にかかる費用の数分の一で済みます。本人もつらい思いをして、飼い主さんも治療に苦労をする風邪は 注射一本で済む予防をしましょう。

ブログ一覧