12月1日  カメが三匹も診察に来ました

私は なるべくいろんな種類の動物を診察しようと心掛けています。勿論犬猫が来院する頻度も高いので自然と経験値も上がり、経験しながら勉強もするので 獣医師としての能力も向上しているのではないかと思っています。それ以外の動物は 人気のある小鳥やハムスターの類は 時々来院されますから 徐々にではありますが経験を積み その度に改めて勉強しますから それこそ少しずつかもしれませんが 診療できるようになってきていると思います。

所が 極たまにしか来院されない種類の動物は 当然ですが経験量もなかなか増えませんから 正直な話あまり自信がありません。極端な場合は 診察する動物が初めての接触の場合もありました。ただ珍しい動物の場合は来院される前に 飼い主さんから電話で診察が可能か確認されますので 来院されるまでの間に予習ができます。私はかなりの種類の動物の代表的な病気とその基礎的な診察や治療法が掲載されている本を持っていますので 来院されるまでの時間で その動物について読み返します。

勿論その子がその種類として初めて診ることは 飼い主さんには知らせませんが 結構ドキドキしている場合もあります。例え初めてその動物を診る場合でも 一応それなりの基礎知識と 初めて接する動物への愛情があれば なんとかなってきたように思います。とにかく初めてを経験しなければ二回目も百回目もないのですから 勇気を出して診療します。初めての種類ではあっても 同じ地球上に存在する動物ですから 病気に対する治療法はある程度共通する部分が多いはずです。

珍しい動物の場合 動物病院でも診察を断るケースが珍しくないようにきいています。飼い主さんの立場に立てば 病院に診察を断られて 何もしてあげられずに 病気の進行を見守るよりも 例え獣医師がその種類を初めてみる場合でも 一応病院で診察を受けて 病気や予後についての説明をしてもらい 治療を受けたほうが ずっと安心できると思います。ですから私は全く初めて接する動物でも診察をお断りしないで これからも頑張ろうと思います。

前置きが長くなりましたが午前中にスッポンが食欲不振という事で来院されました。寒くなってきたので冬眠の準備を始めたのかと思いましたが 水温を冬眠しない温度に設定してあるのだそうで 違う原因を考えました。話を聞くと 二週間前に餌の種類を変えたそうで それ以来下痢気味の便をしているそうです。餌を変えた理由は 何時も買いに行くお店がたまたま在庫を切らしていたので別の種類を購入したのだそうです。

今日ならいつもの餌が購入できるそうなので 取り敢えずは元の餌に戻してもらい 食欲を増す薬と整腸剤を出しておきました。但し食いついたらエライ事になるスッポン相手ですから 飲ませるのが大変かもしれませんが まあスッポンがかわいくて面倒をみている飼い主さんですから なんとか頑張って飲ませて頂けると信じましょう。

午後一で右手に怪我をしたホシガメが来院しました。子供さんが持ち上げていて コンクリートの上に落としてしまったのだそうです。それ以来右手の動きがぎこちなくなり一週間たってもよくならないので連れてこられました。診察したところ 外傷や腫れは何処にもなくて 力強く動かせますから 骨にも異常はなさそうです。

正直な所カメの痛みに対する感覚が鋭いのか鈍いのか分かりかねますが 違和感があるからぎこちなくなっているのだと思いますから 人間なら湿布でもはるところです。幸い陸ガメなので外用薬をたっぷりと塗ってもらう事にしました。消炎剤を飲ませてもらいたかったのですが以前に薬を全く飲まなかったそうなので外用薬だけで治療することにしました。分厚い皮膚に薬を塗布してどれくらいの効果があるのか分かりませんが 効いてくれるのを期待するしかありません。

八時ぎりぎりに 目の腫れたゼニガメがやってきました。一日で三匹も亀の治療をするのは 初めてです。診察すると確かに右目の瞼が腫れ上がっているみたいです。なにしろ首をすぐに引っ込めてしまうので 確認しづらいのですが三日前ぐらいから段々腫れてきたのだそうです。消炎剤の眼軟膏を麺棒で塗布してもらう事にしました。内服薬も使いたかったのですがとても飲ませるのが難しそうだったので諦めました。

カメは甲羅に被われていますので 聴診器で心音の確認もできないし、触診で内蔵の状態も確認できません。頭をひっこめられてしまいますから 顔の状態や呼吸の状況も凄く分かりづらいのです。ひょっとしたら一番診察しづらい動物かもしれません。しかし診察台の上で出来る限りその時の状態を確認し 飼い主さんから話をきいて 診断して治療をするしかありません。

治療も普段水中にいるカメの場合 外用薬の投与が難しいです。注射をするにも上手く頭でも捕まえられれば出来る場合もありますが 一旦警戒されてしまうと出て来てくれませんから中々注射できません。飲み薬も甘くて口当たりが良い薬でも 飼い主さん次第では飲めない場合も少なくありませんから、診断も難しいけれど 治療するにも一番厄介な動物かもしれません。

けれどせっかく当院に来院していただいたので なんとかそのカメの状態が改善する方法を考えて治療を試みます。残念ながら 一切の治療を拒否されてしまう場合もあるかもしれませんが それはその病気や怪我をする状況になってしまったのが その子の運命として受け入れて頂くしかないのかもしれません。本日来院してくれたカメちゃんたちがなんとか上手く治療を受け入れてくれることを期待致します・

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