3月17日 旅行ボケしているので 仕事について考えてみました

今回の春の旅行は 三泊といつもよりも短かったのですが 姫路城も四国も全く初めてで 移動が長くてそれなりに肉体的には疲れましたが とても楽しくて充実した旅行だったと思います。本日から 気を入れ直して仕事に取り組みます。休んでいるうちに体調を崩した子がちょこちょこいたみたいで パラパラと患者さんが来院されましたので あんまりボーっとしている暇はなかったので有難かったです。ボーっとしている方が なかなか時間が過ぎてくれなくて 反って退屈してしまうからです。この仕事は わざわざ大学を通い直してまで就いた職業ですから 勿論やりがいは感じていますが やっぱりのんびりと好きな所へ旅している方が 楽しいです。
私は 普通に一つ目の大学を卒業した時に 普通の会社に就職しました。理工学部の化学科を卒業して 塩野義製薬に入社しました。理科系の学科を卒業したと言っても 職種は営業 いわゆる病院周りで 医者相手の自社の薬の売り込みです。とは言いましても そんなに新しい薬が発売されるわけではありませんから 仕事の大半が医者の雑用のお手伝いみたいなものです。学会に出かけると医者が言えば 宿と切符の手配をします。野球がやりたと言えば 球場を手配して お弁当を準備します。釣りがやりたいといえば 釣り船と釣り宿の用意をします。
塩野義製薬は 抗生物質が主力のメーカーでしたが 抗生物質には数えきれないほど種類があり 自社の製品が圧倒的に優れていれば ほっといても薬は使用されて 売り上げは上がりますが、ぶっちゃけた所 その効き目はドングリの背比べなのです。勿論塩野義は日本でも何本かの指に入るぐらいの一流メーカーでしたから それなりにしっかりとした立派などんぐりは持っていましたが 結局医者にチョイスしてもらえるか否かは 普段からの営業部員が 医者を満足させるに足るサービスが出来ているか否かにかかっているのです。
ライバルである他社の営業部員との駆け引きや 医者が望んでいるものの内容とタイミングのリサーチなど それなりに頭の回転も必要ですが 毎日毎日同じ時間に訪問するなどの しつこさと言うか粘り強さも要求されます。それなりに仕事としての面白みはあると思います。私は新人として金澤の営業所に派遣されましたが 最初に単独で任されたのが 放射線科でした。放射線科と言うのは レントゲンなどによる画像診断と 癌の治療に放射線を照射するため 癌のそれもかなり症状の進行した患者さんをたくさん抱えています。ただしこれまで 塩野義の主力商品である抗生剤は殆ど使用されていませんでしたので 新人の私が担当させられたのだと思います。上司が仕事のきっかけづくりに治験を十例依頼してくれました。要するに治療に塩野義の薬を使ってもらって その臨床報告をしてもらい 一件についていくらかの謝礼を渡すと言う事です。
治験を受けてくださった先生が たまたま私と相性が非常に良かったみたいで 残念ながらこれまで放射線科ではあまり塩野義の薬は処方されていませんでしたので あまりご存知なかったみたいなので 新人の私が 一生懸命に薬の用法用量や副作用についてなど説明させてもらいました。たまたまその担当をしていただいた先生とウマがあったみたいで 担当したばかりの新人営業マンと 治験を任されるぐらいですから 放射線科でもかなりベテランの先生でしたが 結構な信頼関係が出来上がりました。
おかげでお願いした治験は 癌の末期の患者さんの感染症治療に大量に投与されて 有難い事に非常に効果がクリアに表れてくれました。外科系の科を担当すると 一軒の患者さんを獲得したと言っても 手術の術後感染予防などに再少量をほんの三日間位処方してもらうのがやっとでしたが 放射線科で癌末の患者さんの感染症の治療に一件用いられると 最大量で上手くすると何週間も処方されますから 勿論私だけの手柄ではありませんが 大きな宝の山を探り当てたようなもので 仕事の滑り出しとしては 非常に好調でした。
但し 仕事ですから 上手くいくことがあれば 当然上手くいかず 失敗を繰り返す頃の方が多かったです。基本的にこの仕事は 他人に殆ど頭を下げた事の無い医者相手ですから 非常に難しいし大変なのです。その分待遇も凄くよかったし 給料やボーナスもほかの業種の方よりは 凄く恵まれていました。当たり前ですが 上手くいけば面白いし楽しいので頑張れる。頑張れるから更に良い結果につながっていくのかもしれません。しかし逆の目が出て 悪いことが始まると 仕事が辛く感じてしまい 全然面白くありません。面白くないので 頑張りがきかないで 猶更悪い方向に向かってしまうのでしょう。
落ち込んでしまって 大学の卒業の時にお世話になった先生の所に相談に出かけました。仕事にやりがいを感じられないのだけれでも 名の通った一流企業だし待遇も給料も非常に恵まれている。我慢してつづける方向で頑張るべきなのか 気持ちを切り替えて方向転換を図るべきなのか 教えを乞いに出かけました。先生は 自分も大学教授になろうと思ってなったわけではないけれども実際になってみると それなりに面白いし やりがいが後からついてくる感じになってきた、との言葉をいただきました。そんなに景気の悪い時代ではないのだから 真面目に取り組めば どんな仕事をしても食っていけるはずだから 仕事に楽しさ 面白みが感じられないのなら 別の仕事を探しても 年齢的には全然間に合うはずだ という有難い言葉を頂きました。
そこで普通の方なら 直ぐに再就職の道を探されるのかもしれませんが 私は子供の頃からの夢であった動物病院の先生を 思い切って目指すことにしてしまったのです。一寸思い切りすぎたのかもしれませんが 慌てて一年間受験勉強をやり直して 何とか岐阜大学の獣医学科に潜り込んで いろいろあって今日に至っているわけです。そんなに大きな回り道をしてまで就いた仕事ですから 働けるうちは頑張りそうなものですが この仕事にも当然嫌な事 辞めたくなる事は 沢山あるのです。勿論やりがいが感じられて この仕事が出来て幸せだと思う事も少なくありませんが 人間不信になり 生きていく自信すら無くしそうになることもしばしばあるのです。
こんな私の様に 愚かで怠け者の人間でも 幾らか世の中のお役にたてていることがほんの少しぐらいはあるはずだと信じて この仕事を二十年以上なんだかんだと頑張ってきましたが そろそろ限界が来ているみたいなので このブログでは何度も申し上げているように 体が元気で 気持ちも明るいうちに 仕事を引退して 優雅でちょっとだけリッチな老後を早目にスタートしようと考えています。飽きっぽくて 何事も長続きしない私が それでも二十年以上頑張れたのは やはり自分の好きなことを仕事にできたおかげだと思っています。私の様な何の取り柄もない惨めなにんげんですが せめて仕事の引き際位は見苦しくなくて 潔い姿で幕を引きたいと考えていますので 後わずかだとは思いますが 皆様どうぞよろしくお願い致します。

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