3月11日 テンレックと言う初めて聞くネズミの治療をしました

私の不勉強のせいだと思いますが 恥ずかしながら テンレックと言う動物名を耳にしても 一体どのような姿かたちの動物なのか見当がつきませんでした。ペットショップの方が電話をかけてきて 小動物が肛門から腸が食み出してきているので 治療してほしいという事でした。どのような大きさでどのような姿かたちの動物なのか見当がつきませんでしたので 正直にその旨を伝えて 教えを乞いました。トガリネズミの類だそうで 見た目はハリネズミに似ているのだそうです。ハリネズミなら何度も治療したことがありますので 対応させて頂くことにしました。
見た目はトガリネズミの様に 顔がトンガっていて 口がつき出しているのが特徴のようです。ハリネズミに近い種類なのだそうで 確かに毛が固くて 素手で振れるとチクチク痛いぐらいでしたので 直ぐにタオルでくるんでから扱いました。今年になってすぐ位に生まれたのだそうで まだ成長段階なのでしょうから 体重が400グラムほどでした。目や耳 口の中などには問題もありませんし心音も正常でした。最後に問題の肛門を見ると 何と三重にトグロを巻いたように 肛門から真っ赤な腸が飛び出していました。伸ばしてみると全長10センチ位が飛び出していましたので驚きました。肛門から直腸が飛び出している状態の動物とはこれまでに何度も出くわしておりますが これほど長く飛び出した状態は 初めてでしたので 正直少し焦りました。
只治療を始めた以上は 何とか飛び出している腸を肛門内に戻すしかありません。取り敢えずは 飛び出している腸が 汚れていたので 消毒液を掛けて 清潔な状態にしました。次に麻酔薬を含んだ潤滑剤を腸の表面にタップリとたらして 肛門の中に戻すために 指で静かに押し込んでみました。この作業は すんなりと簡単にすむ場合もありますが かなり難航する場合も少なくありません。この子の場合何しろ全長10センチも 突出してしまっていましたから 当然難航しました。
指で一部分を肛門内に押し込んでも 更にその次の部分を押し込もうとしているうちに 最初に入れた腸がまだ飛び出してしまうのです。しょうがないので 綿棒にタップリと潤滑剤をまぶしたもので 一旦押し込んだ腸がまた飛び出さないように押さえながら その次の部分を押し込むやり方に切り替えてみました。この手順だと何とか順調に肛門内に腸を戻すことに成功しました。但し一旦肛門内に戻しても 肛門の括約筋が緩んでしまっているみたいなので 直ぐにまた腸が飛び出そうとしてきます。致し方がないので 医療用の瞬間接着剤で 肛門の二か所ほどを貼り付けてしまいました。完全に塞いでしまった方が 腸がまた飛び出さないためには確実ですが 肛門なので 排便するためにある程度の大きさの穴が必要だからです。
瞬間接着剤と言うのは あくまで一時的に刈り止めをしておくためのものですから その接着作用が何時まで持ってくれるかわかりませんが 完全に塞いでしまって 糞詰まり状態になってしまったら 次の排便時に また直腸が飛び出してしまう可能性も高くなりますので 取り敢えずは腸が飛び出さないギリギリの状態で様子を見るしかない事を ペットショップの方に説明して 理解して頂きました。近所の方ならお預かりするところですが 遠方の方でしたので お返しせざるを得ませんでした。
取り敢えずは飛び出した腸を肛門内に戻して 何とか落ち着いてくれたので 抗生剤と消炎剤を注射して 明日以降同じ内容の飲み薬をシロップで出して 内服させてもらう事にしてお返ししました。何とが無事に落ち着いてくれることを祈るばかりですが 何しろ飛び出していた腸の長さが 凄く長かったので かなり心配です。まあ 本人が至って平常を保っており 元気で食欲もあるそうなので 何とかいい状態に回復してくれることを期待します。
それにしてもテンレックと言う小動物の事が どれだけ世間に認知されているのか 興味があります。私は 小動物の臨床に携わっておりますから 一般の方よりもたくさん勉強しておかなければならないのは 当然ですが 還暦を迎えた年よりですから あまり新しい知識が入ってきません。無理して詰め込もうとすると 昔にしまい込んだ知識を簡単に取り出せなくなってしまうのかもしれません。日本人にも 珍しい物好きな方 他人とかぶらない希少な動物をペットにしたい方が 結構いらっしゃるみたいで その需要のこたえるべく ペットショップさんが目新しい動物をどんどん輸入されて 販売されているみたいなので 時々全くその動物についての基礎知識が無くて焦ってしまう事があります。
本日のテンレックも 生まれて初めてその名前を耳にして その姿を目にしましたが まあ何とか対応して治療は出来たように思います。今後なるべく新しい知識を導入するように心掛けるとともに 全く初めての種類の動物であっても 何とか私でお役にたてそうであったなら 果敢にチャレンジしていこうと思いました。 

ブログ一覧