3月6日 大阪の獣医師が フィラリア予防薬の違法販売で 書類送検されたのだそうです

法律に疎い私には 書類送検と言うのがあまりピンときませんが 要するに容疑者が逃亡したり証拠隠滅の可能性が低い場合には 身柄を警察に拘束されていない状態で 起訴状が検察に送られた状況の事なのだそうです。フィラリア予防薬 と言うのは 内服や滴下、注射等の方法で犬に投与して 蚊を媒介として心臓に寄生虫が住み着いてしまう病気を予防する為の薬です。心臓に素麺の様な形と大きさの寄生虫が住み着いてしまい 犬の寿命を大幅に縮めてしまう恐ろしい病気です。蚊が飛んでいる季節 およそ五月から十二月まで月に一回投与してフィラリア症の感染を防ぎます。
12月なんて 季節としては完全に冬ですが 十月いっぱいの予防をきちんとするためには 必要なのです。フィラリアの幼虫にはいくつかの成長段階がありますが 蚊の体内にいる幼虫が 蚊が犬の血を吸うときに犬の体内に移動します。この環境変化が起こってから一月後に次の段階に幼虫が成長します。不思議な事ですが 全てのフィラリア予防薬は この時期の幼虫を殺す事しか出来ません。更に一月が経過すると幼虫は次の段階に成長してしまい この幼虫に対してはフィラリア予防薬は何の効果もないのです。ですから予防薬は 一月ごとに投与する必要があるのです。十月の最終日に犬の体内に移動した幼虫は 十一月の最終日に予防薬の効果がある段階の幼虫になるのです。その為に十二月に予防薬を投与する必要があるのです。
この予防薬を 既にフィラリアに感染している 即ちその犬の心臓にフィラリアと言う虫が住みついている状態で うっかり投与してしまうと 心臓の虫が大暴れして 場合によってはショックを起こして 最悪死亡する可能性があるのです。ですから フィラリア予防薬を投与する前に 必ず血液検査を実施して 前年までにフィラリア症に感染していないことを 確認する必要があるのです。例え前年にきちんと予防しているつもりでも 気温や 蚊の発生状況によっては 百パーセントこの病気に感染していないとは断言できないのです。
もし自分に予防薬を投与するとしたら 運が悪ければ死ぬかも知れないのだとしたら ごく簡単な血液検査を必ず受けてから行うのは 当然のことだと思います。ですからフィラリア予防薬を診察もしない 血液検査も実施しないで飼い主さんに渡すネット販売は 獣医師として最低の倫理観があれば 出来ない行為なのです。うちの病院で 検査を受けずにフィラリア予防薬を希望されたとしたら どんなにお金を積まれようとお断りしております。自分の可愛い犬が ひょっとしたら死ぬかも知れないのに平気な ペットに愛情の薄い飼い主さんなんて うちの病院に出入りして頂きたくありません。
検査をしなければ 確実な安全の確認が出来ない薬を ネット販売するような非常識な獣医師は 厳しい罰を受ければよいと思います。でも そんな愚かで金儲けさえできればいいような動物病院の商売が成立するのは 簡単に予防薬が手に入るので 利用してしまう薄情な飼い主さんにも 責任があるように思います。私は だらしないし 嘘もつくし 人を平気で裏切る最低の人間ですから 偉そうなことは言えないのは重々承知しているつもりですが ペットを飼い始めるという事は その小さな命に対して 全ての責任を負う事ですから それなりの覚悟をしてからにしていただきたいと思います。命のない道具やおもちゃなら たとえどんなに高価な物でも 飽きてしまえば 捨てるなりほったらかしにしても 構わないのかもしれませんが 小さな命が天寿を全うするまでは 出来る限り大切に扱って欲しいと私は思います。

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