6月17日 野良猫を保護しました

 昨日の昼間に電話があり、自分の会社の前で野良猫が行き倒れになっているので診てあげてほしいとのご要望でした。とりあえず応急処置のできる準備と、場合によっては入院させるために病院へ連れ帰るかごを用意して出かけました。
 その場に駆けつけてみると、かなり高齢そうな猫がボロボロになって焼けるように熱くなっているアスファルトの上で横たわっていました。電話を頂いた方とお話をすると この猫はときどき見かけるのでこのあたりにねぐらを持つ野良猫ではないか、ということでした。すでに瀕死の状態だったので ある程度回復の期待できる治療をするには病院へ連れて帰り少なくとも2,3日は入院が必要だろうと、説明しました。電話された方は勿論、飼い主さんではなくて、ただ自分の会社の駐車場で、野垂れ死にされたら、縁起が悪い、という理由で連絡をされたわけです。当院では 野良猫の場合、不妊手術や今回のように治療するケースでは 本来無料でお受けしたいのですが、野良猫の場合扱いづらいケースも多
いのと治療の実費が結構かかる場合が多いので、半分は病院が負担しますから半分は保護された方に負担していただいています。3日間治療すると、一日一万円見当かかるので3日間で3万円の半額1万5千円位かかると説明しました。
 さすがに会社の社長さんみたいで 気前よく見ず知らずの猫のためにお支払いくださいました。太っ腹です。早速猫を持参したかごへおいこみ 病院へ戻りました。
 診察室で診察を始めました。体温が42度を超えていたので 熱中症が疑われ とりあえず身体を冷やしました。顔を正面から見ると非対称で左半分が不自然でいびつに変形していました。左目は陥没しており あごの骨も現在は固まっていますが、骨折していた過去が容易に観察されます。まともに開いている右目も白内障で全く視力はなさそうですから、かなりの高齢猫と推察されます。恐らく両目の視力を失っていたようです。 保護された場所が車通りの激しい道のすぐわきですから たぶん交通事故にあって顔の左半分を強打してかなりの年月が経過しているようです。
 口の中の歯肉炎もひどく 強い腐敗臭が漂っていました。野良猫なので血液検査はしませんでしたが、猫エイズの感染の可能性がかなり高いと思われました。
 加えて目やにやくしゃみ、ずるずるの鼻水、という典型的な猫風邪の症状もひどい状態でした。とても、食事のできる状態ではないので、背中に抗生剤や風邪薬を加えた点滴を入れて、まず栄養分と水分をたっぷりと補給しました。かなり抵抗されましたがなんとかバスタオルにくるんで抑え込みました。多分人に触れられるのが初めてなのでしょう。相当に怖かったのだと思います。けれど抵抗はしたものの噛みつこうとする仕草は全然見られず、本来はおとなしい猫ちゃんなんだろうと思いました。しばらくすると無駄な抵抗であると理解してくれて、じっとしてくれました。点滴が終わり、顔が目やに、涎、傷口の瘡蓋だらけだったので、きれいに消毒液で拭いてあげました。目やにがなくなり陥没していた
眼も微かに開いて眼球の存在か確認できました。口の周りの涎を取り除いたので 腐敗臭がかなり弱まりました。あごの傷跡の瘡蓋を取り除き抗生剤の軟膏を塗布してあげました。眼にはたっぷりと目薬を差してあげました。
 それでも鼻水がずるずるだったので、吸入処置を施しました。鼻の粘膜の炎症を改善するようなお薬や抗生剤を霧状にして狭い締め切ったかごに流し込みなかにいる猫が呼吸をすることで自然にお薬を吸入して呼吸を楽にする治療です。
全ての治療が終わるころには猫ちゃんがだいぶ私に慣れてくれたようで、頭を撫でさせてくれるようになりました。あとは冷房の効いた部屋でゆっくりと休ませました。                      今朝になって様子を見ると 昨日は伸びて寝っころがった状態でしたが、普通に伏せの態勢になっていました。まだ少し鼻づまりや目やにはあるもののすごく楽そうにスースー呼吸をしていました。 
 エイズや風邪という伝染病を抱えた子なので、ほかの入院している子の面倒を見て最後に治療しました。顔の状態は昨日とは別猫のようにきれいになっていました。勿論まだ目やにや鼻水は少し残っていますが、昨日に比べて目もぱっちりと開き、呼吸もずいぶん楽そうでした。体温は38.5度と平熱に戻っていました。とりあえず、また皮下点滴を入れて栄養分や水分を十分に補給しました。勿論風邪の諸症状を改善する薬や抗生剤も入っています。
 続いてまた、顔をきれいにお掃除しました、目やにや涎を拭き取り瘡蓋も取り除きました。また目薬をたっぷりと差して 傷口に抗生剤の軟膏をしっかりと塗り込みました。猫ちゃんがだいぶ私に慣れてくれたので 全ての処置が昨日よりもずっとスムーズにいきました。続けて吸入治療もまた実施しました。
 昨日よりもかなり状態が改善したので、ひょっとして食欲も戻っているのではないかと期待して、食べやすくて栄養価の高い缶詰に鰹節をたっぷりと掛けて目の前においてみました。残念ながら、昨日瀕死の状態だった子なので食欲が戻るまでには元気になっていなかったようで、興味も示してくれませんでした。
 当院としても 猫ちゃんと赤の他人様からそこそこの料金を頂いて お預かりしてしまった以上は食欲が戻り、ある程度 元気になっていくめどが立つまでは面倒を見させていただくつもりです。焦っても仕方がないので、明日には食欲が戻ることを期待したいと思います。

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