6月13日 長年面倒をみてきた犬が 病院で息を引き取りました

年齢が16歳ですから 平均寿命以上に頑張って長生きしてくれたワンちゃんでしたが 十年以上も前から きちんと予防注射などに通ってくださっていた 常連さんの子でした。お年寄り夫婦が 面倒をみておられるのですが 二三年前から お爺ちゃんの認知症が始まり ワンちゃんの事も分らなくなってしまわれていたみたいです。うちに通い始められたころは お爺ちゃんがまだお元気で 何時も電話をかけてこられて 予防注射を頼みたい とかシャンプーカットをしてやってほしい とお願いされました。ワンちゃんもまだ若くて元気で 電話のすぐ近所で ワンワンキャンキャンと賑やかに吠えていました。

所が 認知症が進んでしまって 養護施設に入ってしまわれてからは それまであまり面倒をみておられなかった お婆ちゃんが可愛がられるようになりました。昨年そのお婆ちゃんが 骨盤を骨折されて 長期入院されましたので その間半年以上にもわたって うちの病院で お預かりをしました。半年以上もずっと面倒をみていると 気持ちとしては 自分が飼っているような心情になってしまいますので お婆ちゃんが退院されて 自宅にお届けした時には 何だかとても寂しくなってしまいました。そのときすでに十五歳でしたから お婆ちゃんとしては 預けているうちに何かあっても仕方がない と覚悟しておられたみたいですが 何とか無事に元気な状態でお返しできました。

今年になってから お婆ちゃんが体調を崩されて 頻繁に病院通いをされていたみたいで そのワンちゃんも寂しくもあり 何か異常な雰囲気を感じ取って 不安な状態だったのかもしれません。丁度一週間前から 鼻の穴から 濃厚な膿のような鼻水を垂れ流すようになり 同時に食欲が全く無くなって 元気も消失してしまった と電話がありましたので 直ぐに往診に出かけましたが その場での治療でどうこうなりそうな状態ではないと判断しましたので 預かって帰り入院してもらいました。

すぐに血液検査をしましたが 肝機能 腎機能の値も 普段とは違ってかなり高いし 白血球も凄く増大していました。まずは鼻から濃厚な鼻水を垂れ流していましたので 簡単に鼻うがいをさせようとしましたが 鼻孔で鼻くそのようにカチカチに固まってしまっているようなので ほぐしながら少しずつ鼻が通るように処置しました。更にお薬を霧状にして 呼吸することによって 鼻の奥にお薬を届かせて 鼻孔の奥に凝り固まった鼻くそを除去しようと試みました。これまでも鼻づまりの症状の子の治療は経験がありましたが これほど大量に 頑固に凝り固まっている状態は 初めてでしたので 焦らずに少しずつでも鼻くそが流出してくれていましたので 根気よく治療を続けました。

食べられないので 点滴で栄養分と水分を補給して 抗生剤や 肝機能 腎機能を改善するお薬などを 点滴とともに流し込んで 少しでも全身状態が改善する様に治療を継続しましたが 病状は一進一退で なかなか快方には向かってくれませんでした。入院5日目に 呼吸不全の状態になりましたし 治療の効果も殆ど感じられませんでしたので 一旦自宅にお返しして様子を見ようかと お婆ちゃんにお電話しましたが その状態で返されても 辛いだけなので 年齢を考えたら 命に関わっても納得できるので 病院でできる最善の治療をしてほしい とのことでした。

せめて食欲が少しでも出てきた とか お預かりした時よりもいくらかでも元気が出てきた と言った明るい材料がないままにお返しするのは 申し訳ないし お婆ちゃん一人で 苦しんでいるペットの面倒をみるのがつらいお気持ちもわかるし うちの病院を信頼して頂けていることが何よりもありがたかったので 入院を継続して 出来る限りの治療を施しました。しかるに残念ながら 回復してくれず 先日 静かに息を引き取りました。亡くなった事をお知らせする電話をかけた時も お婆ちゃんは覚悟が出来ておられたみたいでした。ただ自分では 足がないので 動物霊園にも出かけられないので 後の処置までお願いできないかと 依頼されました。

動物病院ですから 信頼できる動物霊園さんに心当たりがありますので すぐに電話して 火葬してもらう予約を取りました。指定された時間に 近所の花屋さんで可愛らしい花束を購入して 霊園まで送り届けました。直ぐに火葬が始まるとのことでしたので 奇麗にお骨になるまで 約一時間ほど待合室で時間を潰して お骨を拾い共同墓地に納めました。半分 自分が飼っているような気持にまでなっていた犬でしたから 火葬が始まる時と お骨を拾う時には 思わず涙が出てきました。

火葬証明書と治療費などの請求書を届けるために 本日飼い主さんをお尋ねしましたが ワンちゃんに関わるものは 写真以外はきれいに片づけられていました。片付けてしまわないと 心に区切りがつかないのだそうです。本日お話をしていて 知ったのですが お婆ちゃんはなんと肝臓に癌が見つかり これからまたしばらくは入院生活が始まるのだそうです。ワンちゃんとしてもその気配を察して 自分の死期を決めたのではないか と仰っていましたが その子とおばあちゃんのつながりを考えると 頷けるような気がしました。

動物が亡くなることは 残念ながら動物病院では 日常茶飯事ですが 特にお付き合いの深かった子が亡くなると やっぱり私も人並みに落ち込みます。元気を取り戻すために ナーちゃんの写真集でも眺めようと思います。ナーちゃんは 私にとって最高の 活力源です。

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