7月5日 全く厄介な腫瘍摘出手術

全身麻酔をかけて実施する手術は全て ある意味死と隣り合わせの状況で行いますから 当然細心の注意を払います。一旦手術を始めたら スムーズにやるべき処置をやり遂げて無事にその動物が麻酔から覚めることだけを目指します。病院の外来の仕事は こちらがどんなに張り切っても 緊張を要する治療の必要な患者さんが 来ない限りは 割とのんびりと仕事をしています。

残念ながら うちの病院はいつも行列ができるほどに 流行っている病院ではないので 特にのんびりした雰囲気なのかもしれません。当然手術の予約も混みあって入る場合もあれば 暇で奥様とカラオケに出かける日もちょくちょくあるような状況です。普段が割とのんびりした雰囲気なので 尚更手術の時には 緊張感が高まります。一番数が多いのは 避妊と去勢の手術です。勿論やり慣れた手術でもその動物で手術するのは初めてですから 気を抜いて実施するようなことは絶対にありえません。

とはいえ避妊と去勢の手術は 基本的に健康な動物であり 年齢的にも若いうちに実施する確率が高いので 安心して手術を始められる場合が多いです。私たちが正直申し上げてあんまりやりたくない手術が 腫瘍の摘出手術です。以前にも書きましたが 腫瘍というのは 体にとって厄介な困った存在であるはずなのに 何故か体からVIP待遇を受けてしまいます。体から出来るだけ多くの栄養や血液を送り込むために 太い血管が腫瘍の周囲には張り巡らされるのです。

その腫瘍を摘出する手術はその張り巡らされた血管から 腫瘍を切り離すわけですから 当然少なからぬ量の出血を伴います。恐らく私だけではないと思いますが 獣医師も人間のお医者さんも 手術をする人は皆 出血が嫌いだとおもいます。腫瘍の手術をする場合は ある程度出血することを想定して 静脈点滴して血流量を維持しながら 場合によっては止血剤を投与しながら 手術をしますが とにかく出血が少ない事を願いながら 手術を進行します。

本日手術した子は乳腺腫瘍で すでに鶏卵大になっていて 排膿が始まっている段階の腫瘍の摘出術でした。猫は犬に比べて 麻酔が安定してかかりやすいし犬よりは相対的に出血量の少ない動物ですが やはり相当に神経を使いました。二時間半位で手術が終わりましたが 肩から背中にかけて 鉄板のように固くなり 凝りまくってしまいました。今夜お風呂上りに愛用しているマッサージ器のお世話になると思います。

手術は精神的にも 肉体的にもかなりしんどい仕事ですが その仕事に見合う分の料金を頂きますから 正直な気持ち 手術の予約が入ると張り切って元気になります。緊張感はありますが無事に手術を終えた時の達成感は やはり仕事を頑張った感がそこそこ味わえるます。しんどい手術を終えた時だけは奥様がいつもよりも優しくしてくれるような気がしますので尚更頑張ってしまいます。

下手したら死んでしまう可能性のある手術を 私を信頼して任せて頂けることは 獣医師としてとても名誉なことだと思いますし 飼い主さんのそんな信頼を裏切らないように、今後も研さんを積み体調をベストに整えて 日々の仕事に取り組もうと思います。

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