7月6日 本日はパスツールが狂犬病ワクチンを開発した日です

1885年の本日にパスツールが 狂犬病ワクチンを開発しました。パスツールと言えば パスツール瓶で生命の自然発生説を否定したことぐらいしか 知りませんでしたが「近代細菌学の開祖」と言われる人物で 病気の伝染に微生物が関与しているという当時としては画期的な概念を生み出した 大科学者の一人だそうです。

狂犬病というのは 日本では数十年発生していません。現在現役で臨床を担当している獣医師で 狂犬病に罹った犬を国内で診察した経験のある方は皆無だと思います。ですから狂犬病を過去に消滅した病気のように勘違いされていらっしゃる方は少なくないと思います。

しかし世界に視野を広げれば 毎年確認されているだけで数万の人間が狂犬病の被害を受けて亡くなっているのです。狂犬病の存在はエジプトの歴史書にも記載されていますから 紀元前からその存在を確認されています。この数千年の人類の歴史と狂犬病はずっと関わってきているのです。狂犬病で亡くなられた方の数は あるいはすべての死亡原因のうちでもトップクラスであると思います。

確認されている狂犬病の一年間の死亡者数は インドの数万人がトップです。中国でも毎年数千人が確認されています。狂犬病による死者が確認されていない清浄国は日本をはじめニュージーランド、オーストラリア、イギリス、スカンジナビア半島などほんの数か国の島国及び半島にある国だけなのです。

死亡者数として発表されているのは あくまで狂犬病と確定診断された数ですから実数はずっと多い可能性があります。特に中国などは 人口が多すぎて正確に死亡者数を把握できていない可能性は少なくないのかもしれません。日本人も外国旅行を頻繁にする時代ですから 狂犬病というものをもっと身近に感じて その恐ろしさを再確認する必要があると思います。

日本はたまたま島国であり 国が決めた方針に忠実に従う国民性でしたから たまたま清浄国の仲間入りをしていますが 数十年前までは 狂犬病で結構な数の方が亡くなっておられたのです。それが最近では 狂犬病なんて日本では長いこと発生していない病気なのだから 予防注射をする必要がない などと馬鹿なことを言い出す人が結構増えています。

日本はたまたま島国である地形的な条件によって 水際でその病気の侵入を防げているのと これまでのワクチン接種率の高さからうっかり狂犬病ウイルスが持ち込まれそうになっても その侵入を未然に防げていただけなのです。狂犬病には全ての哺乳類が罹りますから 犬と人間以外の動物にも伝染するのです。

海外旅行に出かけて狂犬病の犬に噛まれて 狂犬病に罹る人が極まれにいらっしゃいます。狂犬病は発症する前にワクチンによって治療すれば無事に治る確率が高いのですが 一旦発症してしまえば致死率は100パーセントの恐ろしい病気なのです。種々の動物がペットとして日本に持ち込まれるような時代になりましたが 動物によって狂犬病に罹った時の症状が異なりますから 珍しい動物が狂犬病を日本に持ち込む可能性も少なからずあるのかもしれません。

万が一狂犬病に罹った動物に噛まれた結果 人間が狂犬病に罹った場合の生前診断は現実的にはかなり難しいのが現状です。そこで発症前に ワクチンを治療のために接種しますが 事前にワクチンを接種している場合としていない場合で 体にかかる負担が全然異なりますから 狂犬病の発生している国へ旅行に出かける際には 必ず狂犬病のワクチンを接種すべきだと思います。

兎に角 狂犬病という病気はたまたま日本では発生していませんが 犬のワクチン接種率が低下している現在 一旦その病気が持ち込まれた際には 簡単に広まってしまう危険性は高まっていますし、海外ではほとんどの国で 現在進行形の病気であることをよく認識すべきだと思います。

そして約130年も昔に 狂犬病のワクチンを開発してくれたパスツールに少しだけでも感謝の気持ちを持ってもいいのではないでしょうか?

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