7月11日 胃拡張のスタプーが来院

今朝は朝一番で、お腹が膨れていて苦しそうなスタンダードプードルが来院しました。病名は胃拡張。ひどくなると胃捻転に発展する病気です。飼い主さんはお仕事があり取り敢えず夕方まで預かり、様子を見ながら治療することになりました。お腹をたたくとパンパンに気体の貯留した太鼓の様な独特の音がします。
 治療法は、胃管カテーテルを口から入れて胃に貯まったガス抜きます。無理なら最悪お腹を開いて、ねじれた胃を正常な状態にもどします。
 まず普通の状態でチューブを飲み込んでくれるかやってみましたが全然無理だったので、軽く麻酔をかけてカテーテルを胃まで挿入しようとやってみました。途中でひっかる部分がありましたが粘滑材のおかげで何とか胃内に到達しました。その途端に「すー」と空気の流れる音がして胃に貯まったガスが抜けていきました。そんなに広くない手術室でしたので、ガスの匂いがもっと匂うのかと覚悟しましたが幸い殆ど無臭でした。
 大学時代に実習で牛の解剖をした時を思い出しました。牛はご存知のように胃が四つあります。そのうち第一胃がお腹の大部分を占めています。容積的にはドラム缶一本分ぐらいだそうです。解剖実習ですから、腹腔を開いたら次に第一胃を開きます。第一胃の役割は発酵タンクであると授業で習っていました。私はもし匂いがするにしても多少酸味があってさわやかなにおいを予想していました。所が第一胃を切り開いた時、中から鮮やかな緑いろの牧草が半ば消化された状態で流れ出すと同時に強烈なにおいが広い解剖実習室に広がりました。完全にうんこの強烈なにおいでした。油断をしていると嘔吐してしまいそうな位強烈でした。この強烈な匂いとともに牛の腹腔内の構造は凄く印象に残りました。 
尚解剖に使った7月11日 胃拡張のスタプーが来院牛の肉は貰って帰れますが、ロースやひれと言った美味しい部分は教授が先に持って帰ってしまいました。私は腿の部分のお肉を頂きましたが、解剖室の匂いがなかなか抜けないのでビーフシチューにして香辛料を利かして美味しくいただきました。
 さて、胃に貯まったガスが殆ど抜けたので麻酔を切り、カテーテルを抜いて様子をみました。
すぐに麻酔からは覚めましたが ガスが抜けて腹部の圧迫がなくなり呼吸は楽になりました。でも、まだぐったりしていたので消化器系が落ち着く薬や食欲元気が出る薬をたっぷりと入れた点滴を背中に流し込みました。
 背中の部分の皮下、つまり皮とお肉の部分の隙間にごく短時間で流し込む点滴のやり方を皮下点滴と呼びます。一日に必要な水分や栄養分、そしてお薬をほんの数分で投与できて、すごく便利な点滴法です。もっと具合の悪い動物の場合は人間と同じように腕(前肢)の静脈に留置針というチューブを挿入して、そこから点滴を入れます。その場合は人間の場合と同様に数秒に一滴の割合で流し込みます。あまり急速に流し込むと肺や心臓に負担がかかるので体重によって決められた速さで流し込みますので何時間もかかります。
 夕方には少し元気が出てきてしっぽを振ってくれるようになったので、笑顔で飼い主さんに動物をお返しできそうでホッとしました。私は勿論動物が大好きだから獣医師になったわけですが 頑張って仕事をして動物が元気になってくれて、飼い主さんに喜んでいただけると、この仕事につけたことをすごくうれしく思います。

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