7月9日 子宮蓄膿症の手術

 昨夜のことになるけれど、小さなチワワ(体重2㎏)の子宮蓄膿症の手術を病院を閉めてから行いました。昨日の朝一番で診察に来られて、症状や検査結果から子宮蓄膿症と診断しました。子宮に細菌が侵入して、何しろ胎児を成長させる場所ですから、細菌にとっても天国みたいな環境で爆発的に増殖する病気です。細菌が増殖しているわけですから、内科的に抗生物質を大量に投与して様子を見るのも一つのアプローチですが、現実的にはほとんど効果は期待できません。私がこれまで子宮蓄膿症と診断したケースで内科的治療が有効だったのは一人しかいません。99%が可及的速やかに子宮を摘出する手術が必要です。
 ただ飼い主さんがいきなりの手術には少し抵抗があったみたいなので取り敢えず内科的治療を試みました。しかし夕方に心配になり飼い主さんと連絡を取ると、朝よりもさらに元気がなくなり非常に心配しているという事だったので、もう一度手術を薦めてなんとか承諾を得ました。明日まで様子を見ていては今晩もたない可能性もあったので夜に緊急手術となりました。手術をするとき 大きな犬は血管も太いので静脈を確保しやすいし それなりに生命力も大きいので 割と安心して手術が始められます。ただし体が大きい分、術野も大きくなります。つまり体が大きいと摘出する臓器も大きくなるので大きく切り開く必要があり、大きくきれば当然縫合にも時間と手間暇が余分にかかります。逆に今回のように凄く小さい犬の場合、ちょっとした異常がすぐに命に関わるので細心の注意が大きな犬より以上に求められます。逆に術野は小さくて済むので縫合作業は楽で短時間で済みます。この犬は数年前にあごにできた腫瘍を摘出する手術をしましたが、その時に麻酔がなかなか安定してかからなくて苦労した経験があり心配していましたが、昨夜は非常に安定してくれて割とスムーズに手術を終えられました。麻酔から覚めるのに少し手間取りましたが、術後の状態としては安定していました。夜中に心配になって2回ほど様子を見に行きましたが、無事に今朝を迎えてくれました。この子は凄く小さくてとっても愛嬌があり可愛いので、私も看護士さんも大好きなワンちゃんなので、朝にはしっぽを振って愛想を振りまいてくれるまでに回復していたので 安心しましたし嬉しかったです。
 手術自体は膿の貯まった子宮を摘出するだけで それほど難しくもないし、出血も多くないので作業としては簡単な部類だと思いますが、何しろ体が小さかったことにかなり神経を使い終わると肩から背中にコリを感じました。じじいになったのだから疲れやすくなっているのは仕方がないけれど、若いときにはすぐに回復したのに今では回復が遅いことにイライラします。
 朝になって食欲が戻っていれば退院できるのだけれど、美味しそうなフードをいろいろ与えてみても見向きもしてくれず、残念ながら本日の退院は難しいようです。飼い主さんが面会に来られた時には、しっぽを盛大に振って嬉しい気持ちを精一杯表していました。それを見て飼い主さんもすごく喜ばれました。飼い主さんの喜ばれる顔を見た時にしんどい手術をしたことが全て報われる気がして、この仕事にやりがいを感じます。

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