8月16日 出産直前の猫の避妊手術をしました

昨日 夜に外来で診察にみえた日本猫の飼い主さんから 生まれてしまっても面倒をみれないので お腹にいる胎児ごと子宮を摘出してほしいとの依頼がありました。母猫の状態から見て 今日明日にも出産してしまいそうな状況でしたので 本日緊急で胎児のいる状態の子宮と卵巣を摘出する 結果的には今後とも妊娠の心配のなくなる避妊の手術を行いました。正直な気持ち せっかく新しい命がもうすぐ誕生するはずなのに 生まれる前の段階でストップをかけてしまう訳ですから やる気がわいてくる手術ではありません。しかし例え生まれても 明るい未来が待っていないのなら 飼い主さんのご希望に従うしかないのかもしれないと考えて 手術を行う事にしました。

以前にも書きましたが 私は手術のうちで 出血が多くなることが予想される場合は 気が重くなります。ましてや現在まだ元気に生きている胎児たちの生命を終わらせてしまう手術ですから猶更でした。通常避妊の手術は 勿論妊娠などしていない普通の状態の子宮を摘出します。普通の状態の子宮の場合は それほど血流も多くないので 殆ど出血することなく手術が終えられます。しかし妊娠している場合 猫の妊娠期間は普通60日+アルファと言われていますから 一つの卵細胞をその期間で子猫にまで成長させるために 沢山の栄養を送り込まれるので 子宮には太い血管が発達して血流量が凄く豊富になります。

勿論太い血管の場合は 糸で結紮して出血を押さえる処置をしますが 結構数は多いし 面倒な作業です。場合によっては胎児の動きが観察される事もありますから 出来るだけスムーズに終わらせたいのですが 不要な出血を押さえるためには丁寧な作業を要求されるので 緊張感の続く疲れる手術になってしまいます。本日の手術もそうなりました。結局三匹の胎児が生まれることなく その寿命を終わりました。

獣医師としては 飼い主さんの要求にこたえるのが仕事です。そのお仕事のおかげで 生活できているのですから 心情的にはやりたくないこともやらねばならない事等 これまでにもさんざん経験してきました。でも本日は 肉体的にも精神的にも かなり疲れましたから 早目に休んで 元気回復に努めようと思います。

 

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