9月1日 動物についての間違った迷信

 今朝一番で見えた患者さんは犬で 飼い主さんが仰ることには「鼻の頭がいつもはしっとりと潤っているのに、今朝はからからに乾いているので慌てて連れてきた」という事でした。よく言われるところの「犬の鼻の頭が乾いていたら病気である」という間違った迷信で勘違いされて来院されたようです。
 何年も通っていただいている常連の患者さんだったので、取りあえず診察台にあげて 何時もの手順で簡単に診察しました。目や耳。口の中を観察しましたが変わったことはありませんでした。続いて皮膚や毛の状態、爪などもチェックしましたが異常はありませんでした。肛門や生殖器を見ても普段どおりでした。検温しても平熱で、血圧を測定しましたが やはり結果に問題はなくて 聴診しても心音や呼吸の状態も正常でした。腹部や関節を触診しましたが異常は見つからず、簡単にできる診察では全然問題はなさそうです。
 ここから先に進むと 血液の検査やレントゲン撮影になります。何か飼い主さんが気づいた具体的な症状があればそのような検査をするのもいいけれど 鼻の頭が乾いていること以外に何も気づくことはないそうですので いったん帰宅して様子をみて頂くことにしました。検査をすれば何らかの異常が見つかる可能性は勿論ゼロではないでしょうが 犬の年齢や普段の状態から突然危険な状態になるとは考えにくいので 特に必要と思われない検査をすることは 気がすすみません。病院としては検査をすれば そこそこの売り上げにはなりますが そこそこの検査料を頂くからにはそれなりの検査結果が得られる状態の時に検査すべきだと私は思います。
 「犬の鼻の頭が乾いていたら病気である」というのは私が子供の頃からよく耳にしていましたが 全く医学的に根拠のない間違った迷信です。勿論、犬の鼻の頭が乾いている時に犬が病気であるかもしれません。但し、犬の鼻の頭が湿った状態の時でも 病気であるかもしれません。即ち、犬の鼻の頭が濡れていようと乾いていようとその犬の健康状態とは何ら関連性がないという事です。
 例えば、人間が緊張状態になると なかなか唾が分泌されなくて口の中がカラカラに乾く場合があります。その時には緊張というストレスがかかって普段とは異なる状態かもしれませんが 緊張から解放されたら口の中も普通の状態に戻るはずです。口の中が乾いているからと言って病気にかかっているわけではありません。普段湿っている犬の鼻の頭が一時的に乾いていても 同様で平常時とは異なるかもしれませんが 一概に病気とは断定できないのです。
間違った迷信、医学的に見て全く根拠のない言い伝えは他にも結構あって それを信じておられる飼い主さんも少なくはないようなので 日を改めてまた書こうと思います。 

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